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2006年9月

2006年9月30日 (土)

ラマン、ロダン、カリエール

ラマン、ロダン、カリエールの3人を中心に添えて、“芸術と科学は同じような背景からの人間の活動だ”という趣旨のエッセイを「日経サイエンス」11月号に書きました。「光と感動、そして芸術と科学」というタイトルです。皆さんはロダンは知っているでしょう。たぶんラマンのことも。では、カリエールのことは知っていますか?

かわいい写真がはいっているので、この月刊誌「日経サイエンス」を買って、読んでくれればうれしいのですが、 ScientPortalというサイトでも読むことができます。

感動しない研究は楽しくないですよね。


2006年9月25日 (月)

とても悲しい若い研究者の死

8月のはじめに、阪大の42歳の助手が研究室で遺体として発見されました。そばにあった毒物と遺書から、自殺の可能性が高いとされていますが、この方が共著者となっていた論文が取り下げられたことに大きく関係しているようです。

いろんな方のBlogでも盛んに議論され、不正行為とのコンテクストでも話題になっています。(科学者の不正行為については、9/49/5のブログでも触れています。)

Natureも9月21日号(P.253)で「Mystery surrounds lab death」という見出しの記事を掲載しています。最後に私のコメントも引用されていて、「Kiyoshi Kurokawa, president of the Science Council of Japan, agrees. "Japanese universities and institutions may not always take the right approaches to resolving problems," he says. "But, do they realize that the science community around the world is watching?"」と締めくくられています。

この若い研究者は、とても優秀で、すばらしい研究者であったようです。

私もこんなところで言いたくもないことですが、あまりにも悲しい若者の死です。


2006年9月23日 (土)

大学のグローバル度、The World's Most Global Universitiesでは?

Newsweek International edition (August 21/26, 2006)で「Global Universities」の特集が組まれ、日本語版が9月27日号として発売されました。International Editionの取材を受けたのですが、私のコメントは掲載されないことになりました。理由はわかりますか?

日本では早稲田の国際部(25%が外人の学生。とはいっても、早稲田大学の全体としては別扱いですから、私にいわせればむしろ「差別」でしょうか)や、秋田国際大学もありますが、まだ小さくてこの特集の題材にもなりません。去年のNewsweek日本語版(10月19日号)でも「大学の国際村化」という特集がありましたが、ここでも日本の大学では、大分の「Asia Pacific University」が取り上げられているだけです。(HP内検索で「アジア太平洋大学」、「Cassim」等のキーワードで検索してみてください。)

つまり、日本には「Global Universities」というテーマで取り上げるような大学がないということなのです。私が取材で話したコメントは、日本の大学には「Global Universities」なんて存在しないという認識に立っていたため、特集の趣旨に合わないとのことで入れられなかったということです。国際版の編集部では(日本支局ではありません)、もっとこの特集のようなトレンドや動きは日本でも当然あると思っていたらしいのですが、実は“鎖国”だということを理解したのでしょう。

この特集は33ページからなりますが、日本についてはその中で2、3箇所。全部で6~8行程度だと思います。

毎日新聞の元村さんの記事で取り上げられたこともそうですが、私の主張は外務省の「30人委員会報告」(委員として参加していました)等にも反映され、政府からも発信され始めています。「大学の大相撲化」、「Science as a Foreign Policy」などのキーワードで主張しているものですが、少しずつですが、広く理解され始めたように思います。後は当事者たちに実行させるための、国内外の圧力が必要ですかね。

ところで、このNewsweekの特集では、ランキングに日本の大学がいくつか入っています。東大16位、京大29位、阪大57位、東北大68位、名古屋大94位です。このランキングに使った指標をよく見ればわかりますが、論文引用回数の多い研究者数、Nature、Scienceの掲載論文数、とかそんな指標によるランキングです。なので、当然この程度には出てくるでしょう。しかし、これらの大学についても本文中には何のコメントもされていないところに注目すべきです。世界で見ている大学の「グローバル度」とは、何かということの認識が違う、ということでしょうね。

どう思いますか?


2006年9月22日 (金)

「枠を飛び出す」

毎日新聞社の元村有希子(科学環境部)さんは、毎日新聞の人気シリーズ「理系白書」を執筆している記者で、ご自身のblogでもたくさんの情報発信をしています。その中で、私のことを何回か引用してくれていて、また最近「大学の大相撲化」という私の主張を伝えてくれました。

●「黄金の3割」をご存知であろうか。多民族国家の米国でよく見る経験則だ。集団の活性化には多様性が重要だが、少数派が3割まで増えれば安定した勢力となり、多様化が進んでいくという。
●ためしに大相撲で活躍目覚しい外国人力士を数えてみたら、幕内力士40人(休場除く)のうち12人と、3割を占めていた。
●日本学術会議の黒川清・前会長は「大学も大相撲を見習え」と呼びかけている。日本の大学は均質すぎる。日本人、男性、しかも履歴が「A大大学院修了、A大助手、A大助教授、A大教授」の四つしかない「4行教授」が威張っている。これでは知の鎖国だ、という。
●加えて大学には「文系・理系」という枠がある。環境、知的財産、ロボットなど、先端分野は文理の協力なしには成り立たないのに、なぜか両者は仲良くできない。
●学部構成や受験も文理の枠が根強いから、高校では文理分けが常態化している。歴史を知らない科学者、技術が分からない経営者を育てても、世界では戦えまい。
●救いは、若者の目が外に向き始めていることだ。発展途上国で働く医師になりたいとカナダの高校に進んだ女子高校生は「久しぶりに帰国したら、似たような顔の人だらけで驚いた」と話していた。この夏、科学の五輪(世界大会)に出場した選手の中には、志望大学を外国に変える生徒が出始めている。
●枠の中にいる限り、その本当の窮屈さは実感できない。日本人のパスポート所持率は約25%(05年、外務省)。若年・壮年に限れば3割を超えるだろう。あとは、飛び出す勇気か。
(毎日新聞 2006年9月20日(水) 朝刊2面「発信箱」)

この趣旨については、2006/4/154/166/28のブログや、「学術月報」(“Science As A Foreign Policy 国の根幹は人つくり”)「IDE 現代の高等教育」(“新科学技術基本計画と大学”) 等の記事でも述べているところです。

また、「4行教授」は石倉洋子さんとの本「世界級キャリアーの作り方」にも出てきます。読んでください。


読書漫遊「インドの深みを知り 日本を見つめ直す」


 読書漫遊「インドの深みを知り 日本を見つめ直す」


出典: WEDGE (2006年9月号)


2006年9月21日 (木)

「算数で、何を学ぶのか?」~日中子供数学オリンピックへのメッセージ

日中両国の小学生を中心とした開催された「数学、日中知的交流会」(2006年8月6日)のプログラムに、私のメッセージが掲載されました。


日中の子供数学オリンピックへのメッセージ: 「算数で、何を学ぶのか?」

算数は何をすることでしょうか?これはみんなが赤ちゃんのときから生まれつきもっている「数、空間、時間」の能力をどのように理解し、日常生活に使うかを知り、学び、お互いの考えや意見を交換できるようにすることなのです。物事を考える基本です。ほかの多くの動物にも生まれつきこの様な能力があるのです。草原のライオンを考えて見ましょう。獲物をとるとき、たくさんいる獲物の群れからどれか一匹に目標を絞り、そこへの距離を測り、そこへ達する時間を考えながら獲物を追っかけ捕まえるのです。まさに「数、空間、時間」を調べ、考えているのです。

でも、一人ひとりの人間に、動物以上の能力を与えてくれるのが教育であり、その基本に算数があるのです。ですから算数を学ぶことは、人生の大事なときにも、どのように考え、計画し、行動すればいいのかを教えてくれる勉強の基本なのです。こんなことはあまり先生も意識はしていないかもしれませんが、そこに算数の大事な役割があるのです。算数ではただ数を計算したり、お金を勘定したり、距離や時間を測ることを勉強しているのではありません。もっともっと大事なことを学んでいるのです。

算数は、文化や言葉や国を越えた人間に共通の価値があります。だから算数のオリンピックも可能なのです。どんどん世界が広がるこれからの時代に、歴史や文化に関わらず、人間共通のみんなの言葉としての算数があるのです。

この企画は、この様な考えを持って、地球での生活を楽しみ、地球の将来を担っていく若い皆さんが、手をつなぎあって、すばらしい世界を築いてくれることを期待してできているのです。「算数のオリンピック」は、このような大きな目標へ一緒に向かっていこう、というプログラムのひとつなのです。

今回は、勉強も、実験も楽しんでください。一緒に時間をともにして、友達の輪を広げることが一番大事なのです。それには算数は世界共通の言葉としてとても向いているのです。今回は、中国と日本の子どもたちだけですが、もっともっと友達の輪を広げてください。

日本学術会議会長  黒川 清


2006年9月18日 (月)

スイスから、「World Knowledge Dialogue」

京都での忙しく長い1週間を終え、翌日は東京で会議に参加。そして、World Knowledge Dialogue(WKD)に参加するため、夜の最終便でParis-Genへ向かいました。到着して車でさらに2時間移動し、Crans-Montanaに入りました。

神経科学で1972年にNobel医学生理学を受賞したGarald Edelman氏、Santa Fe研究所所長のGeffrey West氏などの講演は大変素晴らしかったです。私はこのSanta Fe研究所の研究内容にとても興味があり、昨年からWest氏と企画の相談をしているところです。

また、1975年の「Sociobiology」で大論争を巻き起こしたEdward O Wilson教授(Harvard)が、テレビ中継を使って参加しました。相変わらず素晴らしい内容のお話でした。最近では、なぜ動物も人間も近親相姦しないのかという問いについて科学的根拠になる業績等について考察しています。日本でこのような刺激的な分野の研究者と言えば長谷川真理子先生でしょうか。Wilson教授の学説等についてよく話もされています。これらの「知の巨人たち」については、是非いろいろと調べてみてください。

2日目にはランチ後のラウンドテーブルセッションの座長を引き受けました。6人が5分ずつプレゼンを行いました。東大の住明正教授も「東京大学の試み」という内容で発表をしました。このセッションの報告のタイトルは「Have we become wiser?」です。これは私の問いかけにあった“Have we become wiser now?”からきています。

16日はGenevaへ移動し、夜は在ジュネーヴ総領事の遠藤茂氏の公邸へお招きを受けました。

翌日17日は諸岡さんたちと大雨の中をドライブし、Gruyereにてfunduランチ、シオン城などを訪ね、夕方、飛行場へ。飛行機が遅れハラハラしましたが、Paris CGDでの乗り継ぎにはなんとか間に合いました。

WKDのサイトに、私が最前列で話しを聞いている写真が出ています。

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写真1 WKD会場でシンガポールの若者たちと



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写真2 WKD会場で右から、有本さん(経済社会研究所、元文部科学省科学技術政策局長)、須江さん(日本学術会議次長)、私、そしてシンガポールの方と


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写真3 ホテルの庭で、住さん(東大)、須江さん、私、西垣さん(東大)



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写真4 大使公邸のお庭で、右から林さん(大使館)、遠藤総領事、私、須江さん(日本学術会議次長)、諸岡さん(WHO)、三木さん(大使館)

2006年9月15日 (金)

東京理科大学創立125周年記念 式典祝辞


 東京理科大学創立125周年記念 式典祝辞


出典: 東京理科大学 科学教養誌 「科学フォーラム」(2006年9月号)


2006年9月14日 (木)

笹川平和財団2005年度年報に座談会の内容が掲載されました。

笹川平和財団からの依頼で、「特集-日本のソフト・パワーの発信を考える-世界的課題の解決に向けて、日本に何ができるか」 というテーマで、産経新聞論説委員長/千野さん、デフタ・パートナーズ/原丈人さん、東京大学名誉教授/原洋之介先生と対談を行いました。


 日本のソフト・パワーの発信を考える


出典: 笹川平和財団 2005年度年報


2006年9月11日 (月)

STSフォーラム、誕生日、そして日本学術会議会長職を退任

尾身幸次前大臣主催の第3回STSフォーラム(9月10~12日)が京都の国際会議場で開催され、幹事として参加しました。 6日が札幌、そして7日から6日間、京都ということになります。1日目、尾身幸次会長、安倍晋三官房長官、諸外国の要人等、総勢20人ほどでの昼食会、その後の開会セッションは安倍官房長官の挨拶で始まりました。

小泉純一郎総理がASEM(アジア欧州)会議出席のためフィンランドへ行っていたので、安倍官房長官が“総理代理”として挨拶されました。昨年は皇太子殿下と小泉純一郎総理のご挨拶でしたが、ちょうどその日は衆議院総選挙の投票日でした。

ディナーの後に私の司会で対談が行われました。一人は英国Royal Society会長で、Cambridge大学Trinity CollegeのMaster(学長)、しかも宇宙学、天文物理学の最高峰の一人でもあるLord Martin Rees氏。(余談ですが、Cambridge大学Trinity Collegeの学長と言えばRees氏の前任は何度か紹介しているAmartya Sen氏です。彼は1998年ノーベル経済賞を受賞し、現在の世界の最高の賢人の一人だと思います。)Rees氏とは、今年初めのIAC会議、MoscowでのG8サミットへの協議、そして5月にもロンドンでお会いしています。大変立派な哲学者であり、素晴らしい著書も多く、最近出版された「Our Final Hour」などにはとても共感しています。話をしていても、本の話題で盛り上がったり、とても気の会う方です。

対談のもう一人は、米国Mississippi州知事で共和党の大物、Haley Barbour氏です。

このお二人の対談は今の国際情勢を考えると、私にはちょっと「荷が重いかな」と思いました。そこで、Rees氏とは何回かメールでやり取りをして、Barbour氏とは当日事前に少し話をしてから対談に入りました。Internetのすごいところは事前に色々なことを調べられることです。Barbour知事はなかなかの見識と実行力があり、あの財政難だったMississippi州の知事に2003年に就任して以来、雇用、経済、公教育、医療政策等へ次々と手を打ち、めざましい成果をあげています。特に昨年のハリケーンKatrinaの時の対応では目を見張る指導力を発揮しました。

このようなお二人の際立った背景を紹介して、対談の問題設定をし、Rees氏、Barbour氏、各15分ずつ話をして頂き、いくつかの質疑応答を行いました。お二人とも、すばらしいお話をされていましたので、いずれ、この内容もご紹介したいと思います。

話は変わりますが、実は“9.11”というのは私の誕生日です。「世界を変えてしまった2001年9月11 日。この日は21世紀の初めての私の誕生日なのです」と講演で時々話したこともあり、海外を含めて何人かの方からHappy Birthdayのメールを頂きました。そして、法律規定によって(これが新しい日本学術会議の骨子のひとつですが)10日の真夜中を持ちまして、日本学術会議の会長も“定年”ということになりました。気分的には少しほっとしているところです。

そして、11日の夜、京都のある料亭で、STSフォーラムの幹事会を兼ねた晩餐会がありました。食事の最後に広間が暗くなり、照明の当たっている外の竹やぶを見せる趣向かなと眺めていたら、なんと私のために蝋燭を立てたケーキを用意くださっていました。こんな世界の要人の方たちに誕生日を祝っていただき、しかもこんな場所で、素敵な思い出になりました。

皆さんありがとう。

写真 STSフォーラムでの記者会見。
右から、EgyptのAlexandria Library館長 Dr Ismail Serageldin、SingaporeのPhilip Yeo科学技術担当大臣、尾身幸次委員長、Royal Society会長 Lord Martin Rees、私。

Stspressconference

2006年9月10日 (日)

Global Innovation Ecosystem

日本学術会議では2000年から毎年、“科学技術と持続可能な世界”をテーマにして国際会議を開催しています。今年は9月7日に開催した「Gateway to India」に続き、2日間に渡って「Global Innovation Ecosystem」という会議を開催しました。いま世界中が「innovation」をキーワードに動き始め、競争が激化しているところです。「innovation」については、2004年にアメリカで報告された“Palmisano Report”と呼ばれる「Innovate America: Thriving in a World of Challenge and Change」などが参考になります。Palmisano Reportについては日本語での解説もされています。また、この報告書を取りまとめた議長でIBMのCEO、Samuel Palmisano氏の思想についても参考にしてください。

京都で開かれたこの国際会議には、Palmisano Reportに中心的に関与したGeorgia工科大学のHicks教授、またStanford大学のRosenberg教授等々、素晴らしい方たちが参加してくれました。当日の様子はNHKのニュースでも取り上げられていました。

2日間の会議の締めくくりとして、私は以下の趣旨で話しをしました。

「5年前の“9.11”を覚えていますか?たった5年で世界はとても“fragile”になったのです。なぜなのか、よく考えてください。科学技術と経済成長はもちろん大事ですが、地球規模の問題として増加する人口問題。それに関係して引き起こされる環境、エネルギー、食料、水等々の問題。そして南北格差と貧困。これらの問題解決という目標への共通の認識がなければ、グローバル時代の問題は改善されない」、と。

この会議の参加者が中心となって、問題の解決に対する計画を一緒に考えていこうという方向性が出来つつあります。

9月21日の日経産業新聞に会議に参加してくださった滝順一氏の記事が掲載されていましたのでご紹介します。

● 「初めの一歩」踏み出す 「定期的な協議」を継続:
● 世界的技術革新めざす国際会議経済成長と地球環境問題の解決を同時達成する「世界規模での技術革新(グローバル・イノベーション)」は可能か。その実現に国際協力は必要か。日本の研究者の呼びかけに応じて、米欧やインド、 中国などの科学者、経済学者が集まり国際会議が開かれた。国家利益と国際協力を巡って議論は迷走したが、定期的に話し合いを続けることで最後は一致、重要な論議の「初めの一歩」になった。
● 「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2006-グローバル・イノベーション・エコシステム」は、日本学術会議や経済社会総合研究所などの主催で8、9日に国立京都国際会館で開き、約50人の専門家が討議した。
● 「グローバル・イベーション・エコシステム」は、科学技術振興機構の生駒俊明研究開発戦略センター長ら日本の研究者が提唱する概念。
● 耳慣れない言葉だが、イノベーションにエコシステム(生態系)という言葉をつなげたのは、2004年の米競争力評議会報告(パルサミーノ・リポート)が最初。
● 米国の情報通信(IT)産業の代表者らがまとめた同報告は、産業競争力の優位を維持するために途切れることのない技術革新が必要だと主張。企業や大挙が競争と協働作業を繰り返す社会環境を進化や多様性を備える自然の生態系に例え「ナショナル・イノベーション・エコシステム」と呼べる社会システム作りを進めるべきだとした。
● 生駒氏らの提案は、国の競争力政策としてのイノベーション・エコシステムの発想の枠を押し広げ、気候変動や新興感染症対策など人類共通の課題の解決につながる技術革新に国際協力で取り組めないかというもの。「国家のエゴのための技術ではなく、地球のエコのためのイノベーション」(生駒氏)という転換だが、なかなか理解されなかったようだ。
● インド政策研窮センターのブラフマ・チェラニー教授(安全保障論)は「討議内容が各国のナショナルな話ばかりでグローバルな提案がない」と話していた。
● 実際、パルサミーノ報告が引き金となって、世界中でイノベーション政策が花盛りだ。会議でも目立ったのは、各国の競争力強化を狙ったシステムの紹介だ。
● 日本政府関係者は今年からスタートした第三期の科学技術基本計画でイノベーションをおこす環境づくりを政策の柱に据えたことを披露。英マンチェスター大学のルーク・ジョルジュ博士(科学技術政策)は国内総生産(GDP)の<%を研究開発没資にまわすことなどをうたったEU(欧州連合)の政策を話し、シンガポール経済開発庁バイオサイエンス局長のスワン・ジン・べー氏も多国籍バイオ企業誘致などによる科学技術立国の進展ぶりを話題にあげた。
● 一方、米スタンフォード大学のネイサン・ローゼンバーグ名誉教授(経済学)は技術革新によって未利用石炭資源が使えるようになった20世紀羊ばの実例をあげて「資源量は技術に依存する」と話した。資源・環境問題のあい路がイノベーションによって広がりうるとの展望を示す発言だが、こうした示唆の上に議論が積み重らなかった。
● 国家間で技術開発競争が激しさを増し日本自身も競争力政策を掲げる中で、陳向東(チェン・シャンドン)・北京航空航天大学教授は「先進国にとってすでに古くなった技術分なら協力は可能だろう」とみる。
● 学術会議の黒川清会長は「(政治的にも環境的にも)今の世界は極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。科学技術の役割は重要」と締めくくった。」
● (日経産業新聞 2006年9月21日(木) 滝順一)


2006年9月 9日 (土)

Gateway to India

日本でもインドへの関心が高まってきているように感じませんか?

9月7日に、インドから3人のお客様を迎え、立命館大学アジア太平洋大学学長のCassim氏と相談して企画した、「Gateway to India」というシンポジウムを立命館大学の素晴らしい会場で開催し、大勢の方が来場されました。9月8日~9日に日本学術会議が開催した「Global Innovation Ecosystem」のサテライトとして企画したものです。

Cassim氏については何回か紹介しています。スリランカ出身で日本にはもう20年以上いらっしゃいます。立命館大学アジア太平洋大学は、日本で唯一の本格的で、しかも実際の内容も完全国際化している唯一の大学と言えます。

この「Gateway to India」では基調講演に日系3世の米国人「はね(羽根)」氏をお呼びしました。私の友人でもあるHaneさんは、Clinton政権時、ホワイトハウス科学技術政策の国際戦略担当のトップであり、また国家安全保障委員会の科学技術担当責任者も歴任された素晴らしい方です。政権交代以後は、ベンチャー投資の目的などで時々来日されています。

インドからは、政治学者Chellaney氏(昨年、アジアの安定をテーマにした学術会議開催の国際会議にも招聘しています)、歴史学者で芸術家Jafa氏、教育学等のGupta氏(今年4月のNew Delhiでのアジア学術会議でもお会いしました)をお招きしました。日本側の参加者も、立命館大学政策科学部教授の佐和隆光氏、法政大学経済学部長・教授の絵所秀紀氏、元インド公使で日本学術会議事務局長の西ヶ廣渉氏と、論客ばかりでしたので、議論も活発で大変よかったです。

ちょうど東海道新幹線社内誌『Wedge』の「読書漫遊」に、私がインドに関する3冊の本を紹介した「インドの深みを知り 日本を見つめ直す」が掲載されています。こちらも是非読んでみてください。

WEDGE_「インドの深みを知り 日本を見つめ直す」.pdfをダウンロード


2006年9月 6日 (水)

天皇皇后両陛下に「おめでとうございます」

日本学術会議が共同主催する国際顕微鏡学会に参加するため札幌に出かけました。この国際学会には天皇皇后両陛下も御臨席です。朝から、秋篠宮家で男子誕生の知らせが入り、両陛下にもお祝いを申し上げました。

学会会長の開会の挨拶でもこの慶事に触れられ、両陛下に大きな拍手が沸きました。天皇陛下のご挨拶では、1986年京都で開催されたこの学会のあとで、scanning electronmicroscopeを使い日本中にいるハゼには2種類あることを発見(天皇陛下はハゼ研究の分野では著名です)し、論文にされたことなどに触れられ、最後に「皆さんのお祝い、ありがとう」とのお言葉がありました。 これがこの日のテレビで繰り返し流れたのです。

この日の予定は以前から決まっていたことで偶然でしたが、私も運がいいな、と思いました。

会議には松田科学技術担当大臣もご出席され、帰りも同じ飛行機で帰りました。


2006年9月 5日 (火)

子供を元気に

学術会議の活動の一環で「子供を元気にする」講演会がありました。その中で、なんと私が基調講演を50分。ちょっとそぐわない感じがしました、、、。

しかしながら、子供を囲む社会の状況、大人の状況はよくないですね。都市化、核家族化、少子化、自然に接しない日常生活等々。香港では「平均の住居が14階」にあるということです。どんな子供達が育つのでしょうか。テレビの強い影響を受けて育つ。本当にかわいそうですね。

参考までに下記のブログなども読んでみてください。

2006/7/20 「子どもを育てる、みんなで育てる」
2005/8/1  「ときめきと教育」
2004/8/1  「科学者の社会責任:子供を育てる、みんなで育てる」


科学者の不正行為-その2

昨日もお話したように科学者の不正行為が社会問題になっていますが、読売新聞にもこの問題が特集記事として連載されています。9月3日(日)掲載の第6回に、「科学立国は今-不正を断つために」として、滝田恭子氏によって私のコメントが以下のように紹介されています。


● 研究費の不正受給や論文データのねつ造、改ざんなど、国内で起きている問題は互いにどこかでつながっている。根っこにあるのは科学技術予算の急激、大幅な拡充だ。
● 大学が予算をきちんと執行管理できなければ研究者まかせになるし、巨額の研究費を獲得した研究者が目の行き届かないくらいに研究室のメンバーを増やせば、論文の不正を招く。
● 日本は世界の科学をリードする米国にならい、公募によって配分先を決める競争的研究資金を増やしてきた。だが旧態依然たる社会構造に、形だけ米国流を持ってきても成功しない。研究者社会の改革が必要だ。
● 私は米国の大学で研究生活を送ったが、研究者はより良い環境を求めて大学をどんどん移る。大学も外部資金に頼っているから、資金をとれる研究者をサポートする体制を整えている。
● 大学の事務局が研究者の持つ装置や研究室の広さを把握し、学生を増やして研究を拡充させられるかどうかまで判断して研究者に資金申請についてきめ細かい助言もする。だから米国では不正受給という問題は起きにくい。
● 日本に必要なのは研究者の流動化だ。米国では博士号を取得したら、出身校とは違う大学で「ポストドクター」として武者修行をする。助教授になる時には、また別の大学に行く。
● 若い研究者を指導する教授たちは、他流試合に送り出した弟子たちの挙措によって、データの取り方や研究手法の適正さなどを評価される。だから若い人をしっかり育てようという緊張感が、研究室に常にみなぎっている。
● 日本では、教授が手足として使いやすい若手を手放さない。論文を量産して多くの研究費は獲得するが、米国のようには指導が行き届かない。
● 大阪大や東京大で起きた論文ねつ造疑惑は、教授が力量以上の研究を行おうとしたことにも原因があるのではないか。学生が実験したデータについて、週1回は直接議論できるくらいの規模の研究室でないと、教育者としての責任を果たせないはずだ。
● 学会を研究者の真剣勝負の場に変えていくことも必要だ。研究に間違いがあるのは当たり前。学会のオープンな議論の中で競争相手から指摘された時にきちんと受け止め、自分を鍛えていくべきだ。
● いい加減な受け答えをすれば、本人だけでなく、指導している教授の能力まで疑われる。日本では仲間同士ほめあったり、有力教授を敵に回したくないから問題点の指摘を控えたりして、学会が間違いや不正を防ぐ機能を果たしていない。
● 日本学術会議も10月には科学者の行動規範を制定し、不正防止に生かすつもりだ。倫理アンケートも実施したが、少し残念だったのは、不正の調査・選定を行う第三者機関を求める声も研究者の中に多いこと。
● 国の関与で第三者機関ができても、役人の天下り先になるだけで、きちんと動くのか疑問だ。研究者自身が大学や学会の改革に取り組み、不正を防止しようと努力するのが先だろう。
(読売新聞 2006年9月3日)


日本学術会議では「科学者の不正行為」についての提言を2005年に発表し、その後もいくつかの会議、報告書等を科学者コミュニテイへ向けて発表しています


2006年9月 4日 (月)

科学者の不正行為

科学者の不正行為が大きな社会問題になっています。世界のどこででもこの問題は起こりますが、これには様々な背景があります。 8月31日にこの問題について総合科学技術会議でお話ししました。

内容は、“研究費を受け入れ、執行、管理する能力が大学等にまだないこと”そして“研究費の管理が研究者にまかされていること”、“米国のシステムを一部取り入れても日本の社会構造と整合しないことがあること”、“日本では研究に対して指導者の責任と指導の能力が弱いこと”、また“大学初ベンチャーとの関係についても研究者に責任が押し付けられている現状”等々です。最後の点については、2004年7月30日の朝日新聞に掲載された「私の視点:治験と株保有 強制力ある規制が必要」でも指摘しています。科学者がもっと発言することが必要です。

また、“不正行為”と“間違い”は別物であることを明確にしておくことの大事さも強調しました。これらについてはまた改めて書くつもりです。

9月3日の読売新聞朝刊に、「研究者こそ改革の旗手」というタイトルで私のコメントが掲載されました。

韓国の黄教授のES細胞不正事件のときにも、東京新聞(2005年12月23日、朝刊)に私のコメントが掲載されています。

また今年もノーベル賞発表の季節がやってきますね。


2006年9月 3日 (日)

読売新聞で紹介されました。

読売新聞にインタビュー記事が掲載されました。


 “科学立国は今 ~不正を断つために (6)”


出典: 読売新聞(2006年9月3日)


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